『ビジネスで用いられている心理学に興味がある』
『(一市民として)企業の戦略の思うツボになりたくない』
『(会社側として)売上をもっと上げたい』
という風に思っている方いらっしゃると思います。
ということで本記事では、
これ以上ダマされないために誰もが知っておくべきコントラスト効果
という内容をお伝えしていこうと思います。
私たちの脳はまず直感的・動物的に物事を高速で判断してしまうため、思い込みが生じてしまうことがあるのです。(脳は、直感的・動物的に高速で判断した後に、理性的・論理的に時間をかけて判断する。)
それこそがまさに認知バイアスであり、その代表例がコントラスト効果なのです。
本記事を読むことで、
- コントラスト効果とは何か
- コントラスト効果の有効活用方法
- ダマされないために気を付けるべきポイント
を知ることができ、
知っておくことで、
社会活動においてダマされる(なぜか買ってしまったり、なぜか良いと思ってしまう)ことがなくなるとともに、コントラスト効果をうまく活用して人の印象・行動を操ることができるようになるのです。
逆に、知らなければ、
認知バイアスであることに気づかないままこの先ずっと損をしてしまうとともに、うまく活用することもできないままになってしまいます。
少しブラックに聞こえるかもしれませんが、人間の1つの特徴(認知バイアス)として理解しておくことはとても重要です。
それでは、確認していきましょう。
コントラスト効果とは何か
人間は物事を評価する際に、何かと比較して評価を下してしまう傾向があります。
これは、絶対評価ではなく、相対評価で判断を下すほうがはるかに楽に行えることができることに起因しています。
ハイライト(色付け)されている文章・単語が、それ以外よりも重要だと感じるというのも一つのコントラスト効果の例です。
また、下の画像をご覧になってみてください。
どちらをお得だと感じるでしょうか?
大抵の人は左側の値札を見て、お得だと感じると思います。
これは、同一商品・同一価格にも関わらず、値引きされているものをポジティブに捉えてしまうという一種のコントラスト効果なのです。
コントラスト効果の有効活用方法
目的を達成するために、その目的と一緒に何を提示するか、あるいは直前に何を見せるか、が重要です。
同じものでも、相手に比較対象を提示してあげることで印象を大幅に良くすることができるのです。
例として、以下の三つを考えてみましょう。
- 営業(ものを売りたいとき)
- 印象操作(印象を良くしたいとき)
- モチベーションアップ(部下・チームメンバーのやる気をあげたいとき)
■ 営業(ものを売りたいとき、お得に思わせたいとき)
1つ目の例として、レストランのメニューを考えてみましょう。
- Aコース(シルバープラン):2,500円
- Bコース(ゴールドプラン):3,500円
- Cコース(プラチナプラン):7,500円
上記三つのプランがあった場合に、Bコースを選んでしまう方が多いのではないでしょうか。
このように、同様の商品を三つ用意しておくことで、真ん中のプランを選択する確率が増加するのです。いわゆる松竹梅です。
しかし、以下のように2つしかプランがなかった場合はどうでしょうか。
- Aコース(シルバープラン):2,500円
- Bコース(ゴールドプラン):3,500円
価格が安いという理由でAコースを選択する人の方が多くなるのです。
つまり、
Cコースをそれ自体で売上を獲得しようとするために存在させるのではなく、Bコースを注文してもらい、客単価を3,500円にするために存在させる
という戦略をとることができるのです。
2つ目の例として、賃貸契約を考えてみましょう。
マンションやアパートを探している方に、予算をオーバーした物件を先に案内して、その後に予算内の物件を案内するというものです。
予算をオーバーした物件に対して、
「いい物件だけど、予算をオーバーしてるな、、」
と思われることを見越して、その後に予算内の物件を案内することで、
「これなら」と契約してもらえる、という戦略です。
先に予算をオーバーした物件の案内がなければ、予算内かつ良い物件であったとしても、即決はなかなかされないのです。
3つ目の例として、保険の無料見積りを考えてみましょう。
保険にかかわらず、さまざまな業種で無料見積りを実施しており、その実績数を増やしたいという企業は多いと思います。
その戦略として、あえて手数料をとる有料見積りをつくるというものがあります。
つまり、
無料簡易見積りと有料詳細見積りの2パターンを用意しておくというものです。
そうすることで、
無料見積りだけの場合と比べて、無料見積りの実績数が増えるのです。
これは、有料見積りがあることで、
「詳細な見積りを出すには3万円かかりますが、まずは無料の簡易見積りからやってみませんか?」と提案することができ、
「無料ならやってみるか」という心理にさせることができるのです。
■ 印象操作(印象を良くしたいとき)
相手の期待値を下げることで、プラスのギャップ(差分)を大きくできるということを利用します。
見た目が怖い人に優しくされると、見た目が優しい人に優しくされるよりも、印象がより良いと感じるというのも分かりやすい一例です。
逆に、相手の期待値が高い場合には注意が必要です。
例えば、容姿端麗な人は何事にも優れているように思われてしまうため、マイナス部分を相手に気づかれてしまうと普通の人よりも印象が悪くなってしまうのです。
相手の期待値が高いなと感じた場合、相手に自分のマイナス部分をあえて認識させ、印象を調整するのも一つの手です。
いずれにしろ、そもそも自分はどういう存在か、周りからどのように思われているかをまず客観的に把握したうえで、
時と場合に応じて言動を調整することで、相手に与える印象を操作することができるのです。
自分の根本を偽ってまでギャップ(差分)を大きくしようとしてしまう人がいるかもしれませんが、そうではなく、あくまで自分は自分のままでいることです。
そうでなければ、いずれ本性はばれてしまい逆効果になってしまう可能性もありますし、自分を偽るとその他の部分で悪影響が大きくなってしまいます。
■ モチベーションアップ(部下・チームメンバーのやる気をあげたいとき)
以下の4つのコミュニケーションの取り方のうち、最もモチベーションアップに効果的なものはどれでしょうか。
- 終始否定
- 終始褒める
- 最初に褒めて、最後に否定する。
- 最初に否定して、最後に褒める。
正解は4です。
最後にフォローする言葉をかけてあげることが大切です。
単純なことではありますが、その分誰でもできることだと思います。
ただし、やりすぎると相手に気づかれたり効果がなくなってしまうので、本当に否定すべきところは否定して、褒めるべきところは褒めるのが良いでしょう。
迷ったときに、4つ目を実践するくらいがちょうど良いと思います。
ダマされないために気を付けるべきポイント
上述の「コントラスト効果の有効活用方法」と立場を逆にして、考える必要があります。
相手に比較対象を提示された場合、感じた印象をそのまま信じてはいけないということです。
コントラスト効果が用いられている代表例は、
- 通常は6か月かかるところ、この商品を買えば3か月で実現可能
- 通常価格19,800円のところ、今だけ特別価格9,800円で購入可能
などといったものです。
確かに、より素晴らしい商品のように思えるかもしれませんが、本当に通常は6か月かかるのでしょうか。
確かに、お得のように思えるかもしれませんが、本当に通常価格は19,800円なのでしょうか。
より素晴らしく、お得な商品だと感じるかもしれませんが、そもそも本当に欲しいものかどうかよく考えてから決断する必要があります。
その商品についてよく知っていて、確かに本当に良い商品だ、コストパフォーマンスが高いと判断できないのであれば、それは企業側の戦略にハマっている可能性が高いのです。
毎回こんなことを考えていては何も決断できなくなってしまうし面倒だ、と感じる方もいらっしゃると思います。
むしろ、そう感じるのが妥当だと言えるかもしれません。
重要なのは、今回の内容を読んだことで、いかに普段何も考えず、何気なく意思決定してしまっているか、に気づけたということなのです。
そして、その人間の特徴を企業側はうまく利用していると認識しておくことが大切なのです。
認識さえしていれば、大きな失敗は防ぐことはできるはずなのです。
—後書き—
どうだったでしょうか?
本記事では、コントラスト効果の活用方法とダマされないための気をつけ方についてまとめてみました。
言われてみれば当たり前のように感じると思いますが、言われなければあまり意識することもなかったと思います。
コントラスト効果にかかわらず、様々な認知バイアスがあります。
以下の「参考」記載の『MBA心理戦術101 なぜ「できる人」の言うことを聞いてしまうのか』などの本から学んでも良いと思いますが、何より普段の生活で観察してみることがおすすめです。
自分はなぜこの商品を良いと思ったのか、何か認知バイアスが働いているのではないか
と考えてみると面白い気づきがあると思います。
CMや家電量販店、コンビニ、アプリ、サイトなどには認知バイアスを利用したものがたくさんあることに気づくと思います。
そして、それらを自分の仕事、日常生活に活かしてみてください。
最後に心理学者アルフレッド・アドラーの名言をご紹介して終わりとします。
It is very obvious that we are not influenced by “facts” but by our interpretation of the facts.
私たちが「事実」に影響を受けるのではなく、事実の解釈に影響を受けているのは明らかである。
コントラスト効果を理解し活用して、良い人生にしていきましょう!
■ 参考